売掛金債権の時効対策、売掛金債権を貸金債権にする法・・・

  売掛金の回収対策


  資金繰り(キャッシュフロー)を改善するには、売掛金の回収対策を具体的にどのように行うのかが重要なポイントです。
  売掛先の状況に応じた有効な対策を立てましょう!

 ■売掛金債権の消滅時効と時効の中断

   商品や役務(サービス)の代金など売掛金債権の消滅時効は、通常の商事債権が5年であるのに対して1年〜3年と短くなっ
   ています。その期間内に債権を行使しなければ、時効によって売掛金債権は消滅してしまいます。
   時効の進行をストップ(中断)させる事由は、@裁判上の請求、A差押え・仮差押え・仮執行、B債務の承認、があります。
   (民法第147条)
   
●催告
   単に請求書・催告書などを送っただけ(裁判外の請求)では、時効は完全には中断しません。
   「催告」の場合は、催告してから6ヶ月以内に訴えの提起、支払督促などの裁判上の請求をすることによって、催告した日か
   ら時効が中断したことにできます。
   この場合、時効成立間近であれば、時効成立前に催告したことを証明できるよう、
内容証明郵便で催告書を出しておいたほ
   うがよいでしょう。
   もちろん、支払期日を経過した売掛金については、時効前でも裁判上の請求ができることは、言うまでもありません。
   相手に誠意が見られないとき、催告しても全く反応が無いときは、すぐに支払督促をしてもよいでしょう。
   
●債務の承認
   また、相手が支払の猶予を求めてきた場合は、「債務の承認」となりますので、時効は中断します。
   支払の猶予は、時効中断の証拠とするため書面で提出してもらうようにしましょう。
   
●裁判上の請求
   訴えの提起は、相手方の住所を管轄する裁判所に対してしなければならないということ、時間や手間、費用がかかり過ぎる
   ために、実際的な方法とは言えないことが多いようです。
   その点、支払督促は、郵送での申立てが可能ですし、申立て書面の審査だけで発付されますので、利用しやすいと言える
   でしょう。(支払督促とは、債権者の申立てに基づいて、裁判所書記官が債務者に発する支払命令のことです。)
   ただし、支払督促に対して相手が「異議の申立て」を行うと、こちらが通常の訴えを提起したことになってしまうというデメリッ
   トもありますので注意が必要です。

 ■売掛金債権の回収対策

   ●相手に支払う意思がある場合@・・・準消費貸借契約の締結 
   相手に支払う意思があっても、事情によっては一括で支払うことが困難な場合があります。その場合には、売掛金債務を通
   常の貸金債務に切り替えて、分割払いにすることが考えられます。売掛金債務を貸金債務に変更する(消費貸借の目的と
   する)契約を準金銭消費貸借契約といいます。
   通常の金銭消費貸借契約は、「金銭(消費貸借の目的物)の授受」があってはじめて契約の効力が発生する「要物契約」
   ですが、準消費貸借契約は、すでに存在する債務を貸金債務に切り替えるだけの契約です。
   どの売掛金債権を貸金債権にしたのかを明確にし、後日のトラブルを避けるため、必ず契約書(準金銭消費貸借契約書)を
   作成しておきましょう。
   このように売掛金債権を消費貸借債権とすることによって、債権の消滅時効を5年(通常の商事債権)に延長することがで
   きます。
   準金銭消費貸借契約書には、まず、どの売掛金債務を消費貸借の目的とするかを記載します。
   もちろん、複数の売掛金債権を一つの貸金債権にすることもできます。
   あとは消費貸借契約書と同様に、返済金額、返済期日、利息の利率、返済を怠った場合は期限の利益を喪失することなど
   を記載し、双方が署名・捺印します。
   そして、可能な限り債務者に連帯保証人を立ててもらうようにします。相手が会社の場合は、会社の社長個人を連帯保証人
   に立ててもらいましょう。その際、連帯保証人にも契約書に署名・捺印してもらいます。
   なお、準金銭消費貸借契約書を
公正証書とすることによって、返済を怠った場合に即、強制執行の手続きをすることが可能
   となります。

                     準 金 銭 消 費 貸 借 契 約 書

  ○○○○を甲、△△△△を乙、□□□□を丙として、各当事者間において、乙の甲に対する○○○
 売掛金債務に関して、次のとおり準金銭消費貸借契約を締結する。

 (債務の確認)
 第1条 乙は甲に対して、○○契約に基づく未払売掛金債務 金○○○○○円 が存することを確認する。

 (準消費貸借)
 第2条 甲及び乙は、乙が負担する前条の売掛金債務を金銭貸借の目的とすることに合意する。

 (弁済)
 第3条 乙は甲に対し、前条の債務を次のとおり分割して支払う。
           平成○年○月から平成○年○月まで毎月末限り金○○○○円
 2 前項の支払いは、甲の銀行口座に送金することによって行う。

 (利息)
 第4条 利息は年○%とし、毎月末限り当月分を支払う。

 (遅延損害金)
 第5条 乙が第3条の弁済を怠ったとき又は第7条の期限の利益を失ったときは、乙は甲に対し、年○%
  の割合による遅延損害金を支払う。

 (連帯保証)
 第6条 丙は、第2条に基づき乙が負担する債務について、乙と連帯してこれを保証する。

 (期限の利益の喪失)
 第7条 乙又は丙は、次の事由の一つが生じた場合には、当然に期限の利益を失い、直ちに債務残額す
  べてを支払う。
  (1) 債務の支払いを1回でも怠ったとき
  (2) ・・・・・・・

  以上本契約の成立を証するため本書3通を作成し、甲乙丙記名捺印の上、各1通を保有する。

          平成○年○月○日
                                   ○○県○○市○○町○丁目○番○号
                                    債権者(甲)  株式会社 ○ ○ ○ ○
                                            代表取締役 ○ ○ ○ ○  印

                                   ○○県○○市○○町○丁目○番○号
                                    債務者(乙)  株式会社 △ △ △ △ 
                                            代表取締役 △ △ △ △  印

                                   ○○県○○市○○町○丁目○番○号
                                    連帯保証人(丙)      □ □ □ □  印


   ●相手に支払う意思がある場合A・・・念書の作成
   売掛金の支払を請求したところ、相手から「すぐには支払えないが、○月○日までには必ず全額支払う」という申し出があっ
   たときは、それを念書などの書面にしてもらいましょう。
   このように支払いの猶予を求められたときは、相手方が債務の存在を承認したことになるため、その時から時効が中断しま
   す。念書をとっておけば、後日、時効が中断していることを証明できます。

                           念   書

  株式会社 ○ ○ ○ ○
  代表取締役 ○ ○ ○ ○ 様


   私は、貴殿に対し○○契約に基づく未払売掛金債務 金○○○○○円 が存することを確認いたします。

   本債務は、平成○年○月○日までに必ず支払うことを約束いたします。


         平成○年○月○日

                                  ○○県○○市○○町○丁目○番○号
                                        株式会社 ○ ○ ○ ○
                                        代表取締役 ○ ○ ○ ○  印


   ●相手に支払う意思がない場合@・・・催告→裁判上の請求
   何度か催促しても支払いがない、または、何の反応もない場合は、先に述べたように時効になる前にまず内容証明郵便
   催告書を出しておきましょう。催告書には支払期限を定め、その期限内に支払いがないときには法的手段に訴える旨の文
   言を入れておきます。
   そして、催告書を出してから6ヶ月以内に裁判上の請求をすれば、時効を中断させることができます。
   なお、裁判上の請求の方法には、少額訴訟支払督促といった簡易な手続きで利用しやすいものがあります。
   支払期日を過ぎていれば、すぐにでも裁判上の請求はできますが、裁判上の請求はすなわち、相手との取引関係を終了さ
   せることになりますので、取引関係に応じて判断することになるでしょう。

   
 少額訴訟
     60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る手続きです。
     60万円を超える債権には利用できません。

 
   支払督促
     金銭の支払を簡易裁判所または地方裁判所の書記官に申し立て、支払督促を出してもらう方法です。
     書類審査のみで出頭する必要はありませんが、相手から異議の申立てが出されると、通常の民事訴訟手続きに移行し
     ます。異議の申立てがなければ、仮執行の宣言を申立て、仮執行宣言付きの支払督促が発付されます。

     
これに対しても異議申立てがなければ、支払督促が確定し、強制執行することができます。

                           催 告 書


  弊社が貴社に対して平成○年○月○日に販売いたしました▲▲の代金額○○○○○円につきまして
  は、平成○年○月○日現在まで支払っていただいておりません。
  つきましては、本書面到達後7日以内に右金○○○○○円をお支払いくださいますようお願いいたしま
  す。
  万が一、右期限内にお支払いいただけない場合は、遺憾ながら訴訟、強制執行その他の法的手続き
  をとらざるを得なくなりますので、ご了承ください。

    平成○年○月○日


     ○○県○○市○○町○丁目○番○号
       ○○株式会社
       代表取締役  ○ ○ ○ ○  様

                                      ○○県○○市○○町○丁目○番○号
                                         ○○株式会社
                                         代表取締役  ○ ○ ○ ○  印

   ●相手に支払う意思がない場合A・・・履行遅滞に基づく契約の解除
   当事者の一方が債務を履行しないときは、相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、契約の
   解除をすることができます(民法第541条)。
   契約の内容によっては、この解除権を行使して、納入した製品などを返還させ、損害賠償の請求をするということも考えられ
   ます。


   ●相手が破産・倒産しそうな場合

   相手の財産を保全するため、裁判所に仮差押えの申立てをすることが考えられます。仮差押えを申し立てるには、債権金
   額に応じた一定の保証金を差し出す必要があります。

   ●回収不能が明らかな場合
   相手方の破産、倒産などで、売掛金債権の回収不能が確定したときは、債権放棄の通知を内容証明郵便で出し、損失を
   確定させましょう。
   内容証明郵便で出しておけば、税務申告で損金計上する際、債権を放棄したことを証明することができます。

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